Amazonベンダー(1P・仕入れモデル)として取引されている方にとって、売上高や販売数は日常的に追いかけている数字だと思います。しかし、Amazonのベンダーマネージャーが最も注意深く見ているのは、売上でも販売数でもありません。純PPM(Net PPM)——Amazonが、あなたの商品を売ることでどれだけ儲かっているか、という指標です。
この数字が落ちると、発注量が絞られ、A+コンテンツの掲載が外れ、広告の掲載枠が細り、最悪の場合は発注そのものが止まります。しかも多くのブランドは、その兆候に気づくのが遅れます。自社の売上レポート上では、むしろ「セールで売れている好調な月」に見えてしまうからです。
この記事は、ベンダーセントラルの「リテール分析」を開いたことはあるけれど、純PPMのタブは何となく素通りしていた——という方に向けた内容です。次の3つの問いに順番に答えていきます。
- 純PPMとは、誰にとっての利益率なのか
- 純PPMの高低は、何に影響するのか
- ベンダーは、純PPMレポートをどう使うべきなのか
目次
問い1:純PPMとは、誰にとっての利益率なのか
純PPM(Net PPM:Net Pure Product Margin/Net Pure Profit Margin)は、Amazonがあなたの商品を小売販売して得ている利益率を表す指標です。ベンダーセントラルの「レポート > リテール分析」から確認できます。

ここが最初の、そして最大のつまずきポイントです。純PPMはあなたの粗利率ではありません。Amazonから見た「この商品を仕入れて売ると、何%残るか」を示す数字であり、視点はあくまでAmazon側にあります。
なぜベンダーが、Amazonの利益率を気にしなければならないのか。理由はシンプルで、1Pモデルにおいて商品を仕入れるかどうかを決めるのはAmazonだからです。小売業者であるAmazonは、自社が利益を出せない商品を仕入れ続ける義務を負っていません。純PPMは、その判断のものさしとして機能しています。
かつては上位版の有料レポート(ARA Premium、年間数万ドル規模)でしか見られない情報も多くありましたが、2022年のリテール分析ダッシュボード刷新に伴いARA Premiumは廃止され、現在はすべてのベンダーが無償で純PPMを確認できます。見られない、のではなく、見ていないだけ、という状態になっているケースが少なくありません。
なお2026年8月時点で、Amazonは純PPMレポートを次世代のレポート機能「カスタム分析(Custom Analytics)」へ移行する旨を案内しています。カスタム分析では、純PPMの率だけでなくContra COGS・販売割引・出荷売上高・商品のCOGSといった構成要素を指標として選択し、ASIN別・ブランド別などのディメンションと組み合わせて表示できます。本記事で解説する「構成要素に分解して読む」という考え方は、そのまま活かせます。
計算式と4つの構成要素
純PPMは、次の式で算出されます。
純PPM =(発送済み収益 − 発送済み原価 + 売上原価控除 − セール値引き)÷ 発送済み収益
これはAmazon自身がベンダーセントラル上で公開している定義です。原文では次のように記載されています。
純PPM:逆の売上原価(CCOGS)およびセール割引を考慮した後のAmazonの利益率。
実質PPM =(出荷済み収益 − 出荷済みCCOGS + CCOGS − セール割引)÷ 出荷済み収益
「Amazonの利益率」と明記されている点に注目してください。これがベンダー視点の利益率ではないことは、Amazon自身が定義文で述べています。
引用文で紛らわしいのが「CCOGS」という略語が2回、別の意味で登場する点です。「出荷済みCCOGS」は出荷済み原価(Shipped COGS)を指し、「逆の売上原価(CCOGS)」は Contra-COGS——売上原価を打ち消す(マイナスする)性質の項目——を指しています。英語圏の資料では Net PPM = (Shipped Revenue − Shipped COGS + Vendor Terms − Sales Discount) ÷ Shipped Revenue と表記されることが多く、Vendor Terms は Contra-COGS と同じものです。
それでは、4つの構成要素それぞれの中身を確認しておきましょう。
| 構成要素 | 内容 | 純PPMへの影響 |
|---|---|---|
| 発送済み収益 (Shipped Revenue) | Amazonが実際に消費者へ販売して得た売上高 | 分母。価格が下がると分母も分子も減る |
| 発送済み原価 (Shipped COGS) | Amazonがあなたに支払った仕入原価 | マイナス要素。卸値が高いほど純PPMは下がる |
| 売上原価控除 (Contra-COGS / ベンダー取引条件) | コープ(co-op)、各種アローワンス、フレイト補填、破損補填、販促への拠出金など、ベンダーがAmazonに提供する資金 | プラス要素。Amazonの実質仕入原価を引き下げる |
| セール値引き (Sales Discount) | クーポン、プロモコード、ベストディール、タイムセール、定期おトク便割引など、チェックアウト時に適用される値引きの額面 | マイナス要素。値引くほど純PPMは下がる |
「セール値引き」は誰が負担しているのか
式の上でセール値引きがマイナス項に置かれているとおり、この値引きはAmazonの粗利から差し引かれる扱いです。ただし、それが「Amazonが全額を被っている」という意味かというと、そうではありません。
ベンダーが販促に拠出した資金(クーポンのクリップ手数料や価格プロモーション資金など)は、売上原価控除の側にプラスで計上されます。つまり純PPMの中では、次のように相殺される構造になっています。
Amazonの実質負担 = セール値引きの額面 − ベンダーが拠出した販促資金
値引き額面だけを見て「販促のコストはすべてAmazon持ち」と読むと、実態を取り違えます。額面はマイナス項に、自社の拠出分はプラス項に、それぞれ別の行として立っている——この対応関係を押さえておくと、レポートの読み違いを避けられます。
値引きは2箇所に分かれて現れる
もう1点、実務上とても重要な性質があります。セール値引きに計上されるのは、販売価格そのものには反映されない、チェックアウト時に適用される値引きだけだという点です。
| 値引きの種類 | 純PPM上の現れ方 |
|---|---|
| クーポン、プロモコード、ベストディール、タイムセール、Prime Dayのディール、定期おトク便割引、ギフトカードプロモーション | セール値引き(マイナス項)に計上される |
| 販売価格そのものの引き下げ(値下げ、他社への価格追随) | セール値引きには現れず、発送済み収益が下がる(分母・分子の両方が減る) |
この違いは、原因を切り分けるときに効いてきます。「セール値引きは増えていないのに純PPMが落ちている」なら、原因は販促ではなく販売価格の下落側にある——つまり値下げや価格追随が起きている可能性を疑うべきだ、と読めるからです。純PPMを単独の数字として眺めるのではなく、構成要素ごとに並べて見る必要があるのは、こうした理由によります。
問い2:純PPMの高低は、何に影響するのか
1. ベンダーマネージャーの評価軸そのもの
Amazonのベンダーマネージャーは、担当カテゴリー・担当アカウントについて、社内から純PPMの目標水準を課されています。四半期・年次のビジネスレビューでは、この数字がそのまま議題になります。あなたのブランドの純PPMが目標を下回っていれば、彼らは「改善のための要求」を出さざるを得ない立場にあります。
2. 年次取引条件交渉(AVN)の主戦場
年次のベンダー交渉では、純PPMが議論の出発点になります。Amazon側から提示される要求は、おおむね次の3つに集約されます。
- コープ(co-op)の引き上げ:販促協賛金の増額要請
- 返品・破損アローワンスの引き上げ:返品対応コストの補填
- フレイト(物流費)条件の見直し:配送コスト負担の要請
いずれも、Amazon側の純PPMを引き上げる打ち手です。交渉に臨む際、自社の純PPMの推移と、それが何によって動いたのか(値引きなのか、原価なのか、構成比の変化なのか)を数字で説明できるかどうかで、交渉の主導権は大きく変わります。
3. CRaP-out(取扱停止)のリスク管理
Amazon社内にはCRaP(Can’t Realize a Profit=利益を実現できない)という分類があります。純PPMが慢性的に低い、あるいはマイナスの商品はこの分類に入り、段階的に扱いが縮小されていきます。注意点として、CRaP-outはある日突然起きるのではなく、兆候が段階的に現れます。
- Amazonが他社への価格追随(price matching)をやめ、販売価格が競合より高いまま放置される
- A+プレミアムコンテンツの掲載権が外れる
- スポンサー広告が作成・配信できなくなる、または既存キャンペーンが停止される
- 発注量が絞られ、在庫が細る
- カートボックスを失う、オーガニック順位が下がる
- 最終的に発注が止まり、商品ページが「現在在庫切れ」のまま売上がゼロになる
この順序は重要です。「最近スポンサー広告の調子が悪い」「なぜかカートが取れない」といった広告・売上側の異変が、実は純PPMの悪化を起点にしているケースがあります。広告の入札やクリエイティブをいくら調整しても改善しない不調に直面したら、一度純PPMを確認してみる価値があります。
レポートを使う前に押さえるべき3つの前提
誤解1:純PPMが高いほど自社にとって良い、とは限らない
純PPMを最も手早く引き上げる方法は、卸値を下げることとコープを積み増すことです。しかしどちらも、自社の利益を削ってAmazonの利益に付け替える行為にほかなりません。純PPMは「高ければ高いほど良いKPI」ではなく、自社の粗利と両睨みで管理すべき制約条件と捉えるのが実務的です。
目指すべきは、自社の利益を差し出して純PPMを買うことではなく、値引き依存を減らし、利幅の厚い商品の販売構成比を上げることで、双方の利益率を同時に改善することです。
誤解2:純PPMには広告費も物流費も含まれていない
純PPMが対象にしているのは商品そのものの売買差益だけです。Amazon側の配送費・フルフィルメント費といった運営コストは含まれません。同様に、あなたが投下しているスポンサー広告費も含まれません。
つまり純PPMが健全でも、自社の広告費を差し引いた後の実質利益は赤字、という状態は普通に起こり得ます。純PPMは「Amazonとの取引が継続できるか」を測る指標であり、「その商品が自社にとって儲かっているか」を測る指標ではありません。この2つは必ず分けて管理してください。
では、自社の収益性はどう見ればよいか
ここで間違えやすいのが、どの項目を自社の売上とみなすかです。発送済み収益はAmazonが消費者に販売して得た小売売上であり、ベンダーの手元に入る金額ではありません。ベンダーの売上に相当するのは発送済み原価(Shipped COGS)——Amazonが支払った仕入原価です。純PPMの式では「Amazonのコスト」として置かれていますが、裏返せばこれが自社の卸売上です。
したがって、Amazonのレポートから組み立てられるのは次の水準までになります。
ベンダーの実質受取額 = 発送済み原価 − 売上原価控除
実務では、これに加えてチャージバック(納品不備や規約違反に対してAmazonから請求される違約金)や欠品控除(発注に対して納品できなかった分のペナルティ)なども差し引かれます。金額が大きい場合は、これらも合わせて把握しておく必要があります。
ただし、これで分かるのは実質的な売上(ネット卸売上)であって、収益性ではありません。自社の製造原価・仕入原価、Amazon広告費、自社負担の物流費や保管費といった項目は、Amazonのレポートには一切含まれていないからです。これらを自社側で突き合わせて、はじめて収益性が算出できます。
具体例で並べてみます。販売価格3,000円、Amazonへの卸値1,800円、1個あたりの売上原価控除150円、セール値引き200円の商品に、1個あたり広告費250円と自社の製造原価1,000円を加えた場合です。
| 視点 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| Amazonの純PPM | (3,000 − 1,800 + 150 − 200) ÷ 3,000 | 38.3% |
| ベンダーの実質受取額 | 1,800 − 150(売上原価控除) | 1,650円 |
| 広告費を差し引いた残り | 1,650 − 250(広告費) | 1,400円(対卸値 77.8%) |
| ベンダーの利益 | 1,400 − 1,000(製造原価) | 400円(対卸値 22.2%) |
ここで注目したいのが3行目までは、すべてAmazonのデータから算出できるという点です。売上原価控除も広告費もAmazon側に記録があります。自社で用意しなければならないのは、最後の1行に必要な製造原価だけです。
そして同じ1商品でも、Amazon側は38.3%、自社側は22.2%と、まったく別の数字になります。純PPMは「Amazonとの取引を続けられるか」、自社側の数字は「その商品を売り続ける意味があるか」——2つの指標は問いそのものが違う、と理解しておくと判断を誤りません。
誤解3:レポート上の売上原価控除は「概算値」である
実務上、最も見落とされやすいのがこの点です。リテール分析に表示される売上原価控除(Contra-COGS)は、実際にAmazonが支払い時に控除した金額そのものではなく、Amazon側の按分による概算値とされています。カテゴリー単位のアクルーアルが誤って配分されるなど、実際のコープ控除額との乖離が生じることが知られています。
海外の分析事例では、リテール分析上の純PPMが42.5%と表示されていたブランドが、実際の支払明細に基づくコープ控除額で再計算したところ54.5%になり、金額にして3,000万ドル超の差が生じていた、というケースが報告されています。
ただし、これは「リテール分析の純PPMは信用できない」という話ではありません。トレンドを追う目的では十分に有効であり、絶対値そのものを交渉の場で持ち出す段階になったら、支払明細(レミッタンス)と突き合わせて検証する——という使い分けが現実的です。
ベンチマークはどう考えるべきか
「純PPMは何%あれば安全か」は、最もよく聞かれる質問です。海外の各種資料では、カテゴリー別に以下のような水準が挙げられています。
| カテゴリー区分 | 言及されている目安 |
|---|---|
| ハードライン(家電・工具など) | 40〜45% |
| ソフトライン(アパレルなど) | 30〜37% |
| コンシューマブル(食品・日用品・ビューティー) | 27〜35% |
| メディア(書籍・音楽・ゲーム) | 20〜25% |
ただし注意点として、これらの数値はAmazon社が公表しているものではなく、支援事業者が経験則としてまとめたものです。実際、出典によっては「10〜15%あれば許容範囲」とするものもあり、水準感には幅があります。市場(日本かアメリカか)、カテゴリー、商品の重量やサイズによっても目標値は変わります。
したがって、外部のベンチマークは参考程度にとどめ、実務では「自社の純PPMが、前年同月・前四半期と比べてどう動いたか」という相対比較を軸に据えることをおすすめします。絶対水準が知りたい場合は、ベンダーマネージャーとのレビューの場で「当カテゴリーの目標水準はどのあたりか」を直接確認するのが最も確実です。
問い3:ベンダーは純PPMレポートをどう使うべきか
純PPMレポートは、Amazonから渡される「成績表」ではありません。自社の意思決定に使う入力データとして捉えると、用途は次の4つに整理できます。
用途1:定点モニタリング — 異変を早期に検知する
まずは月次(繁忙期は週次)で推移を見る習慣をつけます。見るべきは絶対値ではなく変化です。前年同月比・前四半期比で数ポイント以上落ちていたら、原因を分解します。分母(販売価格の下落)なのか、原価なのか、値引きの拡大なのか、それとも低採算商品の構成比が上がったのか。純PPMは4つの要素の合成値なので、要素ごとに並べて見なければ原因は特定できません。
前述のとおり、CRaP-outは段階的に進行します。発注が止まってから気づくのでは手遅れで、モニタリングの目的は「兆候の段階で気づくこと」にあります。
用途2:ASIN別の採算診断 — 低採算SKUを特定する
アカウント全体の純PPMが健全でも、その内訳には必ずばらつきがあります。ASIN別に純PPMを並べ替え、下位から順に見ていくのが基本動作です。ここで浮かび上がった商品が、CRaP-outの候補であり、同時に取扱方針を見直すべき候補でもあります。
注意点として、純PPMが低いからといって即座に切るべきとは限りません。入口商品として新規顧客を連れてきている、あるいは定期購買の起点になっているのであれば、単品の採算だけで判断するのは危険です。純PPMの低さは「調べるべき対象」を示すサインであって、結論そのものではありません。
用途3:値引き施策の事後検証
この記事の前半で見たとおり、値引きは純PPMを構造的に押し下げます。重要なのは、セールのたびに「利幅の減少を数量が取り返せたか」を検証し、次の施策設計に反映することです。
セール期間の前・中・後で純PPMと販売数の推移を並べ、割に合わなかった値引き幅・割に合った値引き幅を蓄積していけば、翌年の販促計画は勘ではなく実績に基づいて組めるようになります。Amazonから値引きを要請された際に「その水準では成立しない」と数字で返せるのも、この蓄積があってこそです。
用途4:年次取引条件交渉の準備
交渉の場で最も強いのは、Amazonが見ているのと同じ数字を、自社も把握している状態です。準備しておきたいのは次の3点です。
- 純PPMの推移と、動いた要因の説明:低下していたとしても、要因を特定し打ち手を示せていれば議論の質は変わります
- 実際のコープ控除額との突合結果:レポート上の売上原価控除は概算値です。自社が拠出した資金が正しく反映されていなければ、純PPMは実態より低く表示されており、それは不利な交渉材料になります
- コープ以外の貢献の可視化:広告投資、販売数量の成長、返品率の低さ、納品遵守率(OTIF)など、Amazonの利益に寄与している要素は純PPM以外にもあります。要求をそのまま飲む代わりに、これらを交渉カードとして提示します
改善に向けた5つの打ち手
診断の結果、純PPMを引き上げる必要があると判断した場合の具体策です。
- 値引き依存を減らす:クーポンやプロモーションの常態化は、純PPMを構造的に押し下げます。前述の「利幅の減少を数量が取り返せているか」を、施策ごとに検証する習慣をつけます。
- 他チャネルの価格を揃える:自社ECや他モールで安売りが発生すると、Amazonは価格追随(price matching)で販売価格を下げ、純PPMが削られます。チャネル横断の価格統制は、純PPM防衛の基礎工事です。
- 低採算SKUを整理する:純PPMの低い商品にコープを積んで延命するより、思い切って1Pの取扱から外す、あるいは3P(セラー)に切り替えるほうが合理的な場合があります。まずはASIN別に純PPMを並べ替え、下位を可視化するところから始めます。
- 販売構成比を高採算商品へ寄せる:広告投資やプロモーション枠を、利幅の厚い商品に優先配分します。同じ広告予算でも、どのASINに寄せるかでアカウント全体の純PPMは動きます。
- コープの実額を監査する:レポート上のContra-COGSと実際の控除額に乖離がある以上、自社が拠出した資金が正しく反映されているかの確認は、そのまま純PPMの是正につながります。過大請求や誤配分が見つかることもあります。
加えて、原価低減や梱包・ケース入数の最適化、チャージバック・欠品控除の削減といった供給側の改善も、地味ですが確実に効く打ち手です。
Ubun BASEでの純PPMの追い方
Ubun BASEでは、ベンダーセントラルのリテール分析とAmazon広告のデータをAPIで取得し、ASINをキーに統合しています。2026年8月のアップデートにより、売上レポートとトレンドレポートで純PPMを確認できるようになりました。
- 売上レポート(日別/月別/ASIN別):発送済み収益・発送済み原価・セール値引き・売上原価控除と並べて「純PPM」カラムを表示。ASIN別に並べ替えれば、低採算商品をそのまま抽出できます
- トレンドレポート(日別/月別):売上・原価・値引き・広告費と同じグラフ上で純PPMの推移を表示。セール期間前後の変化や、値引き施策が利幅に与えた影響を時系列で確認できます
この記事で繰り返し述べてきたとおり、純PPMは単独で見ても意味が薄い指標です。率だけを見て「32.9%でした」と分かっても、それが値引きによるものなのか、価格の下落なのか、低採算商品の構成比が上がったのかは判別できません。
Ubun BASEでは、純PPMの率と構成要素を同じ行に並べて表示します。発送済み収益・発送済み原価・売上原価控除・セール値引き、そしてスポンサー広告費までが1つのASINの行に揃うため、この記事で説明してきた切り分け——「セール値引きは増えていないのに純PPMが落ちている=価格の下落を疑う」「純PPMは良好だが控除も広告費も自社が出している=二重負担」——を、そのまま画面上で実行できます。

Amazon視点と自社視点を、対で並べる
さらにUbun BASEでは、純PPMの裏返しにあたる指標として手残り率を表示します。前述の「自社の収益性はどう見ればよいか」で整理した考え方を、そのまま指標にしたものです。
手残り率 =(発送済み原価 − 売上原価控除 − スポンサー広告費)÷ 発送済み原価
卸売上のうち、コープ等の控除と広告投資を差し引いて手元に残る割合です。注意点として、これは利益率ではありません。自社の製造原価はAmazonのデータに含まれないため、この数字から製造原価を引いて初めて利益になります。それでも、製造原価が短期間で大きく動かない前提に立てば、手残り率の変動はそのまま利益の変動として読めます。
純PPMと対で見ることに意味があります。たとえば次のような状態は、純PPM単体では絶対に検知できません。
| 純PPM | 手残り率 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 横ばい | 低下 | Amazonの利益率は自社の拠出で維持されている。コープの積み増しか広告費の増加が原因。優等生に見えて、実態は持ち出しが増えている状態 |
| 低下 | 横ばい | 自社の負担は変わっていない。値下げや価格追随など、販売価格側で起きている |
| 低下 | 低下 | 値引き施策の拡大。利幅の減少を数量が取り返せているか、販売数と併せて検証する |
とくに1行目が重要です。純PPMが良好なASINほど、実は自社が二重に負担している可能性がある——という逆説は、年次交渉でコープ増額を要請された際に「この商品は既に広告費と控除で二重に負担している」と数字で返すための、そのまま根拠になります。

表示している数値は、AmazonがAPIで提供しているデータを、Amazonの定義どおりに集計したものです。Ubun BASE独自の推計や補正は行っていません。実際にベンダーセントラルの表示値と一致することも確認しています。Amazonが見ているのと同じ数字を、内訳付きで確認できるということです。詳細は機能リリースのお知らせをご覧ください。
まとめ
- 誰にとっての利益率か:純PPMはAmazon側の利益率です。計算式は「(発送済み収益 − 発送済み原価 + 売上原価控除 − セール値引き)÷ 発送済み収益」。ベンダーセントラルのリテール分析から、全ベンダーが無償で確認できます
- 何に影響するか:ベンダーマネージャーの評価軸、年次取引条件交渉の論点、そしてCRaP-out(取扱停止)の判定材料になります。発注量・A+コンテンツ・広告掲載・カートボックスまで波及する、1P取引の継続性を左右する数字です
- どう使うか:①月次の定点モニタリングで異変を早期検知、②ASIN別の採算診断で低採算SKUを特定、③値引き施策の事後検証、④年次交渉の準備——の4用途で使います
- 使う際の前提として、純PPMは自社の利益率とは別物です。広告費も物流費も含まれていないため、純PPMが健全でも自社は赤字、という状態は起こり得ます。また高ければ良いKPIでもなく、卸値やコープで買った純PPMは自社の利益を削っています。Amazon視点の純PPMと、自社視点の手残り率を対で見るのが実務的です
- レポート上の売上原価控除は概算値です。トレンド把握には十分、交渉の根拠にするなら支払明細と突合。外部ベンチマークも幅があるため、まずは自社の前年同月比・前四半期比の推移を軸に据えます
売上のグラフだけを見ていると、値引きで削られた利幅は「好調」に見えてしまいます。純PPMを同じ画面に並べるところから、収益性の管理を始めてみてはいかがでしょうか。
参考文献
純PPMの定義および計算式は、Amazonがベンダーセントラル上で公開している記載に基づいています(ベンダーセントラルへのログインが必要なため、本記事では該当箇所を引用しています)。
それ以外の記述——Amazon社内での運用実態、CRaP-outの兆候、カテゴリー別のベンチマーク、実務上の注意点——については、以下の公開資料を参照しています(いずれも2026年8月時点)。ベンチマーク水準など出典によって記述が分かれる項目は、本文中でその旨を明記しています。
- Reason Automation「Retail Analytics Net PPM」(計算式、各構成要素の定義、セール値引きの対象範囲、データ粒度)
- Reason Automation「Amazon Net PPM: Why Vendors Must Track This Metric」(Amazon社内での利用、売上原価控除が概算値であること、再計算による乖離事例)
- MerchantSpring「Boost Vendor Margins with Amazon Net PPM & Avoid CRaP-Out Risks」(CRaPの定義、CRaP-outの兆候、カテゴリー別ベンチマーク)
- SellerApp「Amazon Net PPM to Make Profits & Win Category Share」(ASIN単位の計算例、売上原価控除の符号、カテゴリー別ベンチマーク)
- Intentwise「Amazon の純PPM レポートがベンダーにとって重要な理由」(ベンダーマネージャーの目標水準、低下時に生じる影響)
- Front Row「Amazon Vendor Negotiations 2025: Protect Your Profitability」(年次取引条件交渉における要求項目と準備)
- Consulterce「Amazon Retail Analytics: The Complete Guide for Vendors」(リテール分析ダッシュボードの構成、ARA Premium廃止の経緯)
- Amalytix「Amazon Net PPM Explained」(アカウント単位・ASIN単位の計算式、改善の方向性)
Ubun BASE
ベンダーの売上データを、AIエージェントに直接聞けるようにする
Ubun BASE は、売上(セラー/ベンダー)・スポンサー広告・AMC のデータを集約し、MCP サーバーとして AI エージェントに公開しています。日次・月次の推移、カテゴリ別や ASIN 別の比較、前月比で動いた商品、売上目標に対する進捗までを日本語の会話で確認でき、そのまま報告資料にまとめるところまで頼めます。
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株式会社ウブン PdM of UbunBASE
2007年に株式会社オプトに入社し、金融業界向けインターネット広告の提案・運用を担当。株式会社電通に出向し、大手ナショナルクライアントのデジタルメディア戦略の立案と実行に従事。2012年にオプトに帰任後、DSPや広告効果測定ツールのプロダクトマネージャーを歴任。グループ会社のスキルアップビデオテクノロジーズでは取締役として動画広告のアドテクノロジー事業を推進。2020年に株式会社ウブンに参画し、Amazonレポートの自動化ツール「Ubun BASE」を立ち上げ、開発とマーケティングを統括。











