Amazon Marketing Cloudにデータが格納される条件とは?データ乖離を防ぐポイントを徹底解説

Amazon Marketing Cloud(AMC)は、Amazon内外の購買行動や広告効果を深く分析できる強力なツールです。特に、有料データセットサービス「Paid Features」の一部であるAmazon Insightsを導入すると、広告接触の有無に関係なく、自社商品の定期便を含む全購買データを取得できるconversions_allテーブルにアクセス可能となります​。これにより、Amazon内でどのような購買行動が起きたかを網羅的に把握し、広告の効果分析やLTV(顧客生涯価値)の評価がより精緻に行えるようになります。

Amazon Insightsについてはこちらの記事もご覧ください。

しかし、実際にAMCのデータを確認してみると、セラーセントラルやベンダーセントラルで取得できる売上データとAMCのconversions_allテーブルのデータに乖離が見られることがあります。このようなデータの不一致は、多くのマーケティング担当者や事業者にとって悩みの種となるでしょう。

実は、AMCにデータが格納されるには明確な条件が存在しており、それを満たさない場合、売上があったとしてもデータがAMC上で正しく反映されないことがあります。このようなデータ欠損は、広告効果の正確な測定やLTV分析に直接影響を与えるため、AMCでの分析を開始する前にデータの乖離原因を確認し、トラブルシュートを行うことが重要です。

本記事では、AMCにデータが格納されるための条件について詳しく解説し、正確な分析環境を整えるための実践的なポイントをお伝えします。

※本記事の内容は2025年2月時点の情報に基づいています。AMCの仕様は今後変更される可能性があるため、最新の情報はAmazon公式のドキュメントをご確認ください。


AMCにデータが格納されるための2つの必須条件

AMCにデータが正しく格納されるには、主にブランドレジストリへの登録広告キャンペーンでASINが紐づけられていることという2つの条件を満たす必要があります。それぞれの条件について、背景や注意点を交えながら詳しく見ていきましょう。

1. ブランドレジストリに登録されていること

まず、AMCにデータを格納するためには、該当するASINがAmazon Brand Registry(ブランドレジストリ)に登録されたブランドに紐づいている必要があります。ブランドレジストリは、知的財産権を保護し、ブランドオーナーが自社商品の出品や管理を円滑に行うための仕組みですが、AMCでデータを取得するうえでも欠かせない役割を果たします。

ブランドレジストリに登録されているかどうかは、登録ステータスによって判断されます。具体的には、REGISTERED(登録済み)またはUNCLAIMED(未請求)のステータスであることが必須です。これらのステータスが確認できない場合、該当ASINに関する購買データはAMCに反映されません。

知的財産権の管理

さらに、ブランドレジストリでは出品アカウントに対して「ブランド代表者」と呼ばれる権限者を設定することが求められます。ブランド代表者とは、そのブランドを管理する権利を持つAmazon出品用アカウントのことで、このアカウントがブランドに正しく紐づいている必要があります。この設定を見落としているケースは意外と多く、ブランド登録自体は完了しているものの、代表者アカウントの設定が不十分なためにデータが取得できない、といったトラブルも発生しがちです。

出品用アカウントの管理

また、ブランドレジストリは単なる登録に留まらず、定期的なステータスの確認と更新も重要です。出品アカウントに変更があった場合や、ブランドの権利者情報が変更された場合は、ブランド代表者の再設定を行わなければデータ取得に影響を及ぼすことがあります。


2. DSPまたはスポンサー広告でASINが紐づくキャンペーンでアクティブ状態の広告が存在すること

次に、データがAMCに格納されるには、該当するASINがAmazonの広告キャンペーンに正しく紐づいていることが重要です。ここで重要なのは、実際に広告費が発生しているかどうかではなく、キャンペーンやオーダーのステータスが「アクティブ」になっていることです。たとえ広告配信が停止していても、キャンペーンが「アクティブ」であればAMCへのデータ格納は継続されます。

Amazonでは、DSP(Demand-Side Platform)とスポンサー広告(Sponsored Ads)という2つの主要な広告フォーマットが存在し、どちらかの広告でASINがキャンペーンに関連付けられている必要があります。

DSPの場合、オーダー設定時に「コンバージョントラッキング」に該当商品を登録することが必須です。さらに、DSPの管理画面内にある「ブランドタブ」に、ブランド自体が正しく登録されていなければなりません。このブランドタブへの登録は見落とされがちですが、これを怠るとASINをトラッキングASINに設定してもデータが反映されない原因となります。

オーダー>コンバージョントラッキング
ブランド

一方、スポンサー広告(SA)の場合は、キャンペーン設定時に「宣伝ASIN」として該当商品を登録する必要があります。スポンサー広告にはスポンサープロダクト、スポンサーブランド、スポンサーディスプレイといった複数のフォーマットがありますが、いずれかの広告タイプで宣伝ASINとして明記されていなければ、購買データはAMCに反映されません。

広告グループ>広告

さらに、1つのASINが広告キャンペーンに紐づけられていれば、同一ブランド内の他のASINに関するデータもAMC上で取得可能となります。例えば、AというブランドのASIN Xだけをスポンサー広告のキャンペーンに登録した場合でも、同じAブランドに属するASIN YやASIN Zの購買データもconversions_allテーブルに格納される仕組みです。この特性により、広告出稿していない商品もブランドレベルで分析が可能となり、より広範なインサイトを得ることができます。

ASINが広告キャンペーンに紐づけられるタイミングですが、仮に既にキャンペーンが配信中であり、その後にASINを追加登録した場合でも、最大13か月まで遡ってデータが反映される仕組みになっています。つまり、設定ミスに気づいた場合でも、早急にASINを正しく登録することで、過去1年以上のデータを取りこぼすことなく取得できる可能性があります​。

ただし、広告キャンペーンが「停止中」や「終了済み」になっている場合、ASINが登録されていてもデータは反映されません。キャンペーンが「アクティブ」ステータスであることを常に確認することが重要です。


データ乖離を防ぐために実践すべき3つのポイント

AMCで正確なデータを取得し、分析の質を向上させるには、上記2つの条件を満たしたうえで、以下のような実践的な対策を講じることが効果的です。

1. ブランドレジストリの登録状況を定期的に確認する

ブランドレジストリは、一度登録すれば永久に有効というわけではありません。出品アカウントの変更やブランド権利者の異動があった場合、ステータスが変わることがあります。セラーセントラルまたはベンダーセントラルの「ブランドレジストリ管理画面」から、登録状況を定期的に確認し、ブランド代表者の紐づけが維持されていることを確認しましょう。

2. 広告キャンペーンのASIN設定とアクティブステータスをチェックする

DSPやスポンサー広告でキャンペーンを作成する際には、該当ASINが正しく「トラッキングASIN」または「宣伝ASIN」として登録されているかを必ず確認してください。また、キャンペーンのステータスが「アクティブ」であることも重要です。配信停止中でも「アクティブ」であればデータは反映されるため、キャンペーンの管理画面から定期的にステータスをチェックしましょう。

3. データの反映期間を考慮して分析を行う

ASINを後からキャンペーンに紐づけた場合でも、13か月間遡ってデータが取得できるとはいえ、反映までに数日から1週間程度かかることがあります。分析を行う際は、ASIN設定日を基準に反映期間を考慮し、正しいデータが取得されていることを確認したうえで、分析に着手することが大切です。


まとめ:データ取得の条件を満たし、正確な分析環境を構築しよう

AMCは、広告の効果測定やLTV分析、顧客行動の深掘りにおいて非常に有用なプラットフォームですが、データの取得にはブランドレジストリの登録アクティブな広告キャンペーンでのASIN設定という2つの必須条件を満たすことが不可欠です。また、1つのASINが広告に紐づいていれば、同一ブランド内の他のASINデータも取得できるという特性を活かすことで、より広範囲な分析が可能になります。

これらの条件を見落とすと、売上データの欠損や分析結果の不正確さにつながり、マーケティング施策の最適化が困難になります。データの反映には時間がかかる場合があるため、分析を行う前にブランド登録状況や広告設定を確認し、トラブルを未然に防ぐことが重要です。

もし、AMCのデータ取得や分析に課題を感じている場合は、Ubun BASEを活用することで、データ抽出やレポート作成をよりスムーズに行うことが可能です。AMCを最大限に活用し、より正確なインサイトを得るために、今一度設定を見直してみませんか?

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