Amazon Marketing Cloud(AMC)によってLTV分析が可能に!広告戦略はどう変わるべきか?

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Amazon Marketing Cloud(AMC)の登場により、広告を通じて獲得した顧客が長期的にどれほどの価値をもたらすのかをより正確に把握できるようになりました。これまでの広告運用では、短期的な指標であるROAS(広告費用対効果)やACOS(広告費売上比率)に注目するケースが一般的でしたが、長期的な視点に立った広告戦略の最適化が求められています。本記事では、LTVとARPUの違いや、投資回収目標期間の設定方法、限界N-CPAの活用法などを詳しく解説し、AMCを用いた広告戦略の最適化について考察していきます。

AMCについてはこちらの記事もご覧ください。

LTVとARPUの違い

LTV(顧客生涯価値)とは、一人の顧客が生涯を通じてブランドにもたらす収益の合計を指します。これは単なる一回の購入額ではなく、顧客が繰り返し購入することで累積していく価値を評価するための重要な指標です。例えば、ある顧客が初回購入で5,000円を消費し、その後1年間にわたって定期的に商品を購入し続け、合計で30,000円を使ったとすると、この30,000円がLTVとなります。

一方で、ARPU(ユーザー1人あたりの平均収益)は、一定期間内における顧客一人当たりの平均収益を示します。これは短期的な売上や広告投資の効果を把握するために便利な指標です。例えば、1,000人の新規顧客がその後6カ月間で合計500万円を消費した場合、ARPUは5,000円となります。

項目LTV(顧客生涯価値)ARPU(1ユーザーあたりの平均収益)
定義顧客が生涯を通じてもたらす総収益一定期間内に1ユーザーあたりが生み出す平均収益
対象期間長期的(顧客との全ライフタイム)短期的(通常は月次、四半期、または年間)
計算方法の例(平均注文額 × 購買頻度) × 顧客寿命総収益 ÷ 総ユーザー数
利用目的長期的ROIの評価広告の投資対効果評価

企業は広告に投資した金額を一定期間内に回収し利益を確保する必要があるため、広告戦略においては投資回収目標期間を設定したARPUを採用することが一般的です。

投資回収目標期間の設定方法

広告の投資回収目標期間を決める際には、商品やサービスの収益性、ユーザーの購入頻度、競争環境など複数の要因を考慮する必要があります。たとえば、サブスクリプション型のECビジネスでは、一般的に1年間を投資回収の目安とすることが多いようです。しかし、Amazonのような競争の激しいプラットフォームでは、競合商品との比較検討が頻繁に行われるため、より保守的な判断が求められます。そのため、まずは6カ月のARPUを基準に投資回収期間を設定するケースが一般的です。

この期間を設定することで、広告の費用対効果を適切に評価し、ROIを最大化するための戦略を構築することが可能になります。投資回収目標が長すぎると、短期的な資金繰りが厳しくなり、広告投資の継続が難しくなるリスクがあります。一方で、目標期間が短すぎると、長期的な利益を見落としてしまい、十分なマーケットシェアを確保できない可能性があります。したがって、自社の商品特性や競争環境を考慮し、最適な投資回収期間を設定することが重要です。

ARPUから限界N-CPAを算出する

限界N-CPAとは、広告投資を行った際に収益がプラスになる最大の顧客獲得単価(CPA)を指します。これは、広告費用を適切にコントロールしながら、利益を確保するための指標として活用されます。算出方法はシンプルで、限界N-CPAはARPUに利益率を掛けることで求められます。

例えば、ARPUが5,000円で、利益率が30%の場合、限界N-CPAは1,500円となります。これはN-CPA1,500円で新規ユーザーの獲得がおこなえれば、目標とした6ヵ月で投資回収が完了し、7か月目から利益貢献するという意味になります。

限界N-CPAと実績N-CPAのバランス

広告戦略を最適化するためには、限界N-CPAと実績N-CPAのバランスを適切に管理することが不可欠です。限界N-CPAが実績N-CPAを上回る場合は、目標とした期間より早く投資回収ができてしまうため、さらなる広告投資の余地があり、積極的に広告を強化することが望ましいです。限界N-CPAを目標N-CPAと呼ばないのはこの点が重要で、限界N-CPAを実績が下回った場合は達成ではなく、柔軟に広告費を調整し限界N-CPAと実績N-CPAのバランスが取れている状態を目指すことが重要です。

反対に、実績N-CPAが限界N-CPAを超えている場合は、広告のパフォーマンスを見直す必要があります。この場合、ターゲティングの調整やクリエイティブの改善、広告費用の削減などの施策を講じることで、コストを適正化し、投資回収目標を達成しやすくなります。

Total ACOS型の予算策定の問題点

従来のTotal ACOS(広告費売上比率)を基準とした予算策定には、いくつかの問題点が存在します。ACOSは広告費が売上に対してどれくらいの割合を占めているかを示す指標であり、短期的な利益率をコントロールするには便利な指標ですが、長期的な視点が欠けるため、LTVを考慮した広告運用には不向きです。

Total ACOSはあくまで単月ごとのパフォーマンスを測定するものであり、顧客の継続的な購入やリピート率を考慮していない点が挙げられます。広告の目的は単なる初回購入の獲得だけではなく、長期的なブランド価値の向上や顧客との関係構築も含まれるべきですが、ACOSの指標ではこれを適切に評価することができません。そのため、短期間の売上を重視した施策に偏り、結果として長期的な利益の最大化を阻害する可能性があります。

企業によっては年間で予算策定を行うため、N-CPAに基づいて柔軟に予算の調整をおこなうことが難しい場合もあります。このような状況下でも、まずは限界N-CPAを仮設定し、実績N-CPAとのバランスを継続的に分析することが重要です。限界N-CPAを基準とすることで、広告の投資状況が適正なのか、過剰なのか、不足しているのかを判断することが可能になります。

Ubun BASEのAMCレポート:ARPU分析について

Amazonレポートの自動化ツール「Ubun BASE」では、AMCに対応したレポート機能を提供しています。特にARPU分析は、ブランドごとに任意の投資回収目標期間を設定し、ARPUの推移を簡単に把握できます。また、各広告キャンペーンのN-CPAも確認できるため、本記事で紹介したLTVに基づく広告戦略をクエリなしで実行可能です。

Ubun BASEはAMCインスタンスの新規開設にも対応しているため、まだインスタンスを持っていない場合でもLTV分析が可能になります。

まとめ

本記事では、LTVとARPUの違いを整理し、広告戦略における適切な指標の選択方法を解説しました。また、投資回収目標期間の設定や限界N-CPAの活用法についても詳しく説明しました。Amazon Marketing Cloudを活用すれば、広告経由のLTVを正確に測定し、より長期的な視点で広告運用を最適化することが可能です。短期的な指標に囚われず、長期的な利益を見据えた広告運用を行うことが、持続的な成長を実現する鍵となります。

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